お酢の発祥の地、堺で創業し、以来様々な挑戦を続けてきたタマノイ酢株式会社。設立は1907年だが、お酢を中心とした事業はさらに古く1590年ごろから始まっている。1893年のシカゴ万博にも出展し、名誉金牌賞を受賞している。以来、400年以上にわたる伝統を守りながら研究開発に注力し、長く食卓や健康を支えている。

スポーツの協賛にも積極的で、セレッソ大阪との付き合いも長い。2000年代のトップチームスポンサーから始まり、2014年にアカデミーの食育パートナー、2020年3月にはセレッソ大阪堺レディース(当時)とオフィシャルスポンサー契約を締結。2023年6月にはセレッソ大阪ヤンマーレディースとゴールドパートナー契約も結んだ。「お酢の可能性を追求して健康寿命を延ばしていくことが我々の使命」と語る播野貴也代表取締役社長に、セレッソ大阪との関わりやスポーツ協賛の意義、今後の展望を語ってもらった。(※インタビューは2026年8月に実施)。

──まずは、タマノイ酢株式会社さんはどのような企業なのでしょうか。ご紹介ください。
播野:会社として組織を設立したのは1907年ですが、実は、1590年ごろからお酢の商標として「玉迺井」が用いられるようになり、お酢の事業を始めていた記録があります。安土桃山時代、堺は織田信長が楽市・楽座をやっていた場所です。当時は日本で一番人口が多く、一番栄えていた日本の中心地でした。堺には港があるのですが、国際貿易都市として、世界中の貿易船が来ていました。その時代は冷蔵庫がなかったので、お酢が重要な保存料だったんです。「お酢と塩があれば、食品を長持ちさせることができる」という昔の人の知恵もあって、その時代からお酢の事業を行っていた記録が残っています。

そこからお酢の事業を中心に広げていって、1963年には世界初の粉末酢「すしのこ」を発売し、今ではそれが海外約50ヶ国に広がっています。お酢はもともと調味料でしたが、「お酢は体にいい」ということが広く知れ渡り、ビネガードリンク(お酢を飲みやすく加工した飲料)も初めて開発しました。1996年に発売された「はちみつ黒酢ダイエット」は30周年になるのですが、皆さまに支えていただいたおかげで、弊社の看板商品になりました。このシリーズの商品は、セレッソ大阪の森島寛晃会長にも現役時代、CMに出演していただいたこともあります(笑)。IMG_2670.JPG

──思わぬつながりをお伺いすることができました(笑)。セレッソ大阪との関係性も長い歴史があると伺っております。初めてパートナー契約を結んだ経緯やきっかけは?
播野:元々は男子チームのパートナーをしていました。時期としては2000年、私はまだ入社していない時期でした。先ほども申した通り、我々の会社は大阪の堺という地で1590年ごろから事業を営んできました。地域の皆様に支えられて今があります。企業として、育ててもらった地域に何かしら貢献をしていきたい想いがありました。私たちの経営方針の中にも社会貢献という言葉が入っています。地域に貢献しながら利益循環型の会社を目指している中でセレッソ大阪さんからお声がけをいただき、サッカークラブを支援させていただくことになりました。

──2014年には、一般社団法人セレッソ大阪スポーツクラブ(アカデミー)と食育パートナー契約も締結されました。こちらの経緯はどのようなものだったのでしょうか?
播野:実はサッカー以外にも、地域貢献の一環としてラグビー、野球、ゴルフ、マラソン、ドッジボールと様々なスポーツの協賛活動をさせていただいております。そうした中で、ただタマノイ酢という名前や看板を飾るだけではなく、次のステージに進みたい想いがありました。協賛するだけではなく、意義や意味、深みを持ちたいと。例えば、お酢の知識を我々自身でも伝えたい、地域の方々や子どもたちにもお酢のことを知って欲しい、お酢を取り入れることで健康になって欲しい、という想いです。現在、日本は超高齢化社会に突入しながら少子化問題もある中で、いかに健康寿命を延ばすかが課題になっています。その課題に対し、お酢を広げていくこと、お酢の知識を小さい頃から知ってもらうことで、長期的な話にはなるのですが、結果的に健康寿命が長くなる。微力ながらそのお手伝いができたらいいなと。地道な取り組みですが、地元の地域からお酢の可能性を追求していきたい想いがありました。

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──2020年3月にセレッソ大阪堺レディースとオフィシャルスポンサー契約を締結され、2023年6月にはセレッソ大阪ヤンマーレディースとゴールドパートナー契約も締結。レディースを支援し始めた経緯、レディースならでは良さもありますか?
播野:現在は女性がスポーツ界でもビジネス界でも社会に出て活躍することが当たり前の時代になっていますが、元々、弊社は女性の管理職の割合が高い。そうした背景から、スポーツをされる女性を応援したい気持ちもありますし、当時はセレッソ大阪堺レディースでした。チーム名に「堺」が入っていることもあり、我々としてもサポートさせていただきたいという思いに至りました。弊社から管理栄養士が出向して栄養指導もさせていただいておりますが、セレッソ大阪ヤンマーレディースは若手の選手が多く、チームで成長を重ねていく選手も多いため、選手一人ひとりの成長過程に寄り添いながら密なサポートが出来る点が良さだと感じています。実際に選手から率直な本音や悩みを聞かせてもらえることで、弊社の管理栄養士からアドバイスを送ることもできます。そうした日々のコミュニケーションを重ね、選手の成長に長く伴走していくことで、ただのスポンサーという枠を超え、より身近な存在としてチームや選手を支えていける可能性があると思っています。

──企業がスポーツを支援する意義について、考えをお聞かせください。
播野:健康寿命を引き上げていくことを考えた時に、医療と共に「食と運動」は大きく関連しています。健康な体を作るため、食を抜いてやるダイエットは良くないと思っています。人間は美味しいものを食べて、心を充実させることも重要。そして普段から体を動かすことも大切なことだと思っています。弊社にはジムがあるのですが、就業時間内に1日30分(行う)というノルマがあるんです(笑)。体を動かすことで頭も働きます。ランニングすることで悩んでいたこともスッキリします。体を動かすことは健康な精神を育むためには大切で、人間が生きていく上において欠かせません。またスポーツには人を元気にさせる力や勇気を与える力があります。また、スポーツを応援するとチームや選手からエネルギーをもらえます。スポーツの持つ力は大きいですし、その力を信じています。そうしたスポーツが発展していくためには、支えるスポンサーがないと難しい現実もあると思うので、微力ながらできる範囲で応援させていただいております。

──セレッソ大阪ヤンマーレディースのゴールドパートナーになったことによるメリットはどのように考えていますか?
播野:我々はメーカーなので、究極は“ファン作り”だと思っています。お酢の会社はたくさんありますが、「この商品がいい」「この会社が好き」と思ってもらえる商品であり企業であることが、その「究極」なのかなと思っています。社名を露出すれば商品が売れてすぐに売り上げが上がるという簡単なモノではなく、中長期的に見て会社としての信頼を得て、ファンを作ることが大事。そうしたファンを増やす取り組みをさせてもらえることはありがたいことです。中でも冠試合(サポーティングマッチ)を開催できることは大きなメリットです。ファン作りの一環ではあるのですが、社員に向けても影響は大きいと思っています。普段、我々は社内で企画して商品を作っているのですが、直にお客さんと接する機会は少ない。しかし、こうした冠試合では、ブースで直接サポーターさんから声を聞かせてもらったり、「タマノイ酢さんいつもありがとう」という横断幕を掲げてもらったり、「こういう人たちに支えられて会社があるのだな」と、仕事をする意義を体感するきっかけになります。自分たちのやっている仕事が誰にどうつながっているのか見えにくくなってしまうこともありますが、「おばあちゃんの時代からすしのこを使ってます」など、生の声を聞くと元気になります。そうした声を直に聞くことができる機会は貴重ですし、社員にとっていい経験になると思っています。
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──ということは、タマノイ酢さんの社内におけるサッカーやセレッソ大阪の認知度もかなり高いですか?
播野:はい、おっしゃる通りです。試合があれば、好きな人が集まって観に行きますし、観戦が社内のイベント的な感じになっています。また、選考会に来る学生の中には、「将来セレッソに関わってみたい」という動機で面接に来てくれる学生もいます。採用の質問でもセレッソへの出向について聞かれることも多いです。実際にそうした志を持つ学生を採用したこともあります。仕事を通じてプロのサッカーチームと関われることは、食品メーカーではそんなにないですし、「タマノイ酢に入れば、色んな可能性に挑戦できる」ということが特長になっています。弊社から出向している管理栄養士の社員がセレッソさんの小学校巡回の中で「将来の夢について考える授業」も持たせてもらっています。子どもたちに夢を与える機会を提供させていただくことは素晴らしいことだと思っています。

──出向された社員が戻られて、タマノイ酢さんに還元されることはありますか?
播野:出向させていただくことで、違う文化を持って帰ってくる感覚があります。弊社は新卒採用のみで、生え抜きしかいないので、ある意味、考えが固まってしまうこともあるのですが、違う環境で刺激を受けることで、社内に戻って、「セレッソではこうやっていた」と伝えてくれることもあります。「その発想はなかった」と私たちにとっても刺激になります。2020年から現在まで、歴代4名の社員が出向していますが、セレッソさんとの距離も近くなっている感覚があります。出向させていただいている社員も何か爪痕を残そうと頑張っています(笑)。
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──今後、セレッソ大阪ヤンマーレディースやセレッソ大阪スポーツクラブと取り組みたいこと、リクエストなどはございますか?
播野:今、考えていることは二つあって、一つは、アカデミックな要素です。弊社は管理栄養士の資格を持っている社員が多いのですが、そうした資格をアウトプットしていく場として、スポーツと絡んでいけたらいいなと思っています。我々はお酢の可能性を追求していくことをテーマにしている会社ですが、実際にスポーツの選手と連携して、ちょっとしたアンケートも含めてお酢の効果を検証できないかと。大学との共同研究もスタートしているのですが、大学との連携だけではなく、クラブチームと連携して研究発表を行えたらという思いもあります。応援する取り組みの一環として、スポーツを終えた後にお酢を飲むことによる疲労回復の測定、スポーツにおけるお酢の可能性を追求する、そのモデルを作れたらいいなと思っています。

もう一つは、広報的なアプローチです。お互いの取り組みの中で、共同開発していく商品を作ったり。以前、あるスポーツチームを応援されている食品メーカーの事例で、冠試合に合わせて、チーム名や企業名を掛け合わせた限定商品を開発し、販売したという話を聞きました。(笑)。遊び心のある企画がSNSでも話題になったそうで、非常に面白い取り組みだと感じました。SNSの時代なので、伝わりやすさとして、そうした戦略も必要なのかなと。弊社冠試合(セレッソ大阪では「サポーティングマッチ」の名称)でも、そうした遊び心を加えた広報的なアプローチができたら面白いなと。もちろん、「お酢の可能性を追求していく」ということが我々の本丸ですが、やっていることが伝わらなければ意味がありません。「タマノイ酢という会社がこういうことをやっている」ということを世の中の人に知ってもらうきっかけとして、そうした何か面白い企画をセレッソさんと取り組めたらと思っております。

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──最後に、セレッソ大阪の各カテゴリーとのスポンサー契約を検討している方へ向けて、メッセージをいただけますでしょうか。
播野:パートナーとなるメリットはたくさんあります。ファン作り、地域貢献に加えて、社員のエンゲージメントを高める効果もあると思います。元々、弊社はイベントが多い会社でして、この夏も納涼会として社内で屋台を出して、社員みんなでワイワイやったりしています。昨今、社員の帰属意識が希薄になっている風潮もある中で、サポーティングマッチではみんなで一つのものを作り上げていくことができます。そうしたきっかけがあると、社内の活性化にもつながるのではないかと思います。また、パートナー企業同士での広がりもあります。開幕前のキックオフパーティーなどで他社さんを紹介いただいて、ビジネスの情報交換をするきっかけも作っていただけます。ビジネスマッチングの場を提供していただけることはとてもありがたいこと。セレッソさんとパートナー契約をすることで、たくさんメリットはあると思います。