本連載は、セレッソ大阪のことを一人でも多くの方に知って頂き、クラブと共に夢を目指す“セレッソファミリー”としてお迎えしたいとの想いのもと、これまでの活動事例を交えながら、我々が考えるクラブとスポンサー様との理想のあり方について、全6回のシリーズ形式にてお届けいたします。
第2回は、拡大を続ける日本のサッカー市場におけるスポンサーシップの重要性や、セレッソ大阪がスポンサー様にご提供できる価値についてご紹介いたします。
近年、日本のスポーツビジネスに注目が集まっています。政府は「日本再興戦略2016」の官民戦略プロジェクトの一つに「スポーツの成長産業化」を掲げており、スポーツ市場規模を2015年の5.5兆円から2025年には15.2兆円まで拡大する方針を示しています。
(日本のスポーツ市場規模予測)
斯(か)かる方針の下、スポーツ庁では、スタジアム・アリーナ改革やスポーツと他産業との融合など、スポーツを成長産業へと転換する取組を積極的に行っており、2021年の東京オリンピック開催を契機として、今後もそのような動きがより一層加速していくことが見込まれています。
数あるスポーツの中でも、特に国内外で大きな盛り上がりを見せているのがサッカーです。サッカーは世界で最も人気のあるスポーツで、国際サッカー連盟(FIFA)には約210カ国が加盟しており、4年に一度開催されるワールドカップは、世界最大のスポーツイベントとなっています。日本代表は1998年のフランス大会に初出場して以来、ワールドカップに6大会連続で出場。国民の注目度も高く、特に2002年の日韓ワールドカップは日本各地で‟ワールドカップ・フィーバー“が巻き起こりました。
(超満員の観衆で埋まるスタジアム)
1993年に国内初のプロサッカーリーグとして発足したJリーグは、当初は10クラブでのスタートでしたが、現在では全国各地に拡がりをみせ、57クラブが加盟しています。
Jリーグ人気の上昇とともに、平均観客動員数は20,751人(2019年度J1クラブ平均)まで増加するとともに、Jクラブの営業収益合計は、2019年度まで9年連続増収となり、1,325億円まで拡大しています。
(Jクラブの営業収益推移)
また、近年は、今後成長が期待できる分野として、Jリーグのスポーツビジネスとしての側面にも注目が集まっておりIT企業によるクラブ経営参画など、クラブとオーナー企業の関係性も大きく変化してきています。
サッカー市場の発展に欠かすことができないのが企業からのスポンサーシップです。スポーツ(サッカー)におけるスポンサーシップとは、企業がスポーツ団体やクラブチームといったスポーツ主催者に対して行う資金・サービス面での支援の対価として、主催者から広告露出権や選手肖像権などの権益の提供を受けるという仕組みです。企業側は、スポンサードの活用により、企業イメージのアップや社会貢献といった自社の価値向上や課題解決を図ることができる一方、主催者側は支援頂いた資金を選手の補強を行うなど経営リソースの強化に充当することができます。
(年1度開催されるキックオフミーティング)
スポンサーシップの重要性はJクラブの資金面にも表れており、全Jクラブの営業収益合計(19年度実績:1,325億円)におけるスポンサー収入の占める割合は48%(640億円)に上ります。
また、セレッソ大阪も同様であり、19年度は営業収益(38億円)のうち45%を占めた他、20年度はコロナ禍により入場料収入が大幅に減少する一方、スポンサー収入は実額ベースで19年度と略横ばいの約17億円を維持し、58%まで上昇しました。
(2019-2020年度におけるセレッソ大阪の営業収益内訳)
スポンサー様にとってもコロナ禍によってビジネス環境が悪化する中、19年度と変わらぬご支援を頂けたことは、セレッソ大阪に対するスポンサー様の期待や想いの強さの表れだと感じており、まさにスポンサー様のご支援によってクラブ経営が成り立っているといっても過言ではありません。
現在、セレッソ大阪は、約120社のスポンサー様にご支援を頂いておりますが、近年、スポンサー様がセレッソ大阪に求めることは多様化してきています。以前は、「地域や社会に貢献がしたい」、「自社商品の認知度向上を図りたい」など、クラブを通じた情報発信力に期待されるケースが大半(“広告露出型”)でしたが、近年は、従業員満足度や採用力向上のためにセレッソ大阪のアセットを活用したり、セレッソ大阪がハブとなり、スポンサー様同士での新しいビジネスの立ち上げや販路拡大をご支援するといった“課題解決型”へと広がりを見せています。
(スポンサーとしての活用目的:セレッソ作成)
このような変化が起こっている背景としては、スポーツ(サッカー)市場に対する注目度の高まりに伴い、“スポーツの価値”についての認知が広まったことが考えられます。
セレッソ大阪ではいち早くその変化の兆しを捉え、各スポンサー様のニーズを丁寧にお伺いし、課題解決のために最適なメニューをご提供するという形へ切り替えを図りました。
(新聞記事にも紹介された東南アジアの販路拡大のご支援事例)
一例としては、クラブのプラチナパートナーであるナカバヤシ様とタイのガラスメーカーをお引き合わせし、両社で新たな事業が始まった事例が挙げられます。これは、コロナ禍で経済状況が悪化する中、何かスポンサー様のお役に立てることが無いかと考え、セレッソが持つ東南アジアでのネットワークを活かし、スポンサー様の販路拡大をご支援したものです。海外企業とのビジネスマッチングは他クラブでもあまり事例が無い取組で、ナカバヤシ様からも、「セレッソ大阪が間に入ることで商談がスムーズに進んだ」と感謝のお言葉を頂戴致しました。
クラブの価値は社会性や知名度だけではありません。スポンサー様と真摯に向き合い、どのような提案をすれば喜んで頂けるかを本気で考えることが、今までに無い新しい発想や価値を共に生み出すことに繋がる。これは、我々が常に大切にしている想いであり、その想いに共感頂けるスポンサー様と共にワクワクする未来を創っていきたい、そう強く願っています。
※第3回は、実際にセレッソ大阪がどのようにスポンサー様にご活用頂いているか、具体的な取組事例とともにご紹介いたします。