本連載は、日頃よりセレッソ大阪をご支援頂いているパートナー企業の皆様に、よりクラブを身近に感じて頂き、企業の事業活動にご活用頂きたいという想いのもと、全5回のシリーズ形式で、セレッソ大阪の様々な活動や魅力をお伝えしていきます。
第3回となる今回は、日頃よりセレッソ大阪を支えていただいているパートナー企業様の声を通じ、企業側からみたパートナーメリットについてご紹介いたします。
プロサッカークラブのパートナーにはどのようなメリットがあるのか?こういった疑問を持つ人は多くいるかと思います。ただ、この問いに唯一の正解はなく、企業によってさまざまです。セレッソ大阪は企業の“課題解決”をパートナーシップの軸に置いており、「100社あれば100通り」の形があると考えています。では、パートナー企業はセレッソ大阪を“使って”、どのような課題を解決し、メリットを享受しているのでしょうか。異なる3社の事例を基に紐解いていきます。
紙の加工製品や事務機器を扱うナカバヤシ株式会社は、2014年からセレッソ大阪と共に歩んでいます。パートナーシップ締結の起点となったのは、設立60周年を迎えた2011年に社内で挙がった「地元大阪への恩返しをしよう」という声でした。2年目の2015年、セレッソ大阪はJ2へ降格しましたが、「パートナーとしてなんとか来年J1に戻れるよう応援したい 」との想いから、パートナー費用を増額しプラチナパートナーとなりました。
(ナカバヤシサポーティングマッチ時、ナカバヤシブースの様子)
カテゴリーを1つ上げたことによって享受できた大きなメリットが「冠試合」だと言います。それは、企業名やロゴが露出されることによる認知度拡大のほかに、思わぬ副産物があったからです。
「スポンサードした本来の理由は子どもたちにナカバヤシの社名や商品の認知を広めたいという目的がありましたから、小学生が数多く観戦する日程を選択し、冠試合として『ナカバヤシ サポーティングマッチ』を実施しました。試合開催日には、入場者に弊社のロジカル・ノートを無料配布する企画をおこなったのですが、配るのはアルバイトではなく弊社社員。普段、営業活動やデスクワークをしているとお客様の反応を直に触れる機会はめったにないですが、社員が直接手渡すことで目の前で受け取った子どもたちが『やったー、ロジカル・ノートや!』と喜び反応する姿に触れられます。はじめは仕方なく協力していた社員もモチベーションは上がりますよね。冠試合が社員のコミュニケーションを活発にする効果もありました」
(ナカバヤシ株式会社 事業戦略部・秋田良治部長)
事業戦略部 部長 兼広報IR室 室長の秋田良治氏は言います。加えて、秋田氏が印象的だったと語るのは、クラブ主催のビジネス交流会です。
「自社の認知度向上、イメージアップといった広告宣伝目的だけでなく、クラブを利用し、新たなビジネスに生かすことも重要なメリットであると様々な事例を紹介しながら講義していただきました。その時、『もっと自由にセレッソを使っていいんだ』という気づきを与えてもらいました」
この意識の変容の結果として現れたのがパートナー企業同士の交流です。自社の新事業として農業を始めたことで、セレッソ大阪のパートナー企業であり外食産業向けの卸業を専門としている株式会社中谷食品の展示会に出展。また、たこ焼きで有名な株式会社和なかとの交流が生まれ、自社の水耕栽培のレタスでたこ焼きを挟んだ“れたこ”というたこ焼きレタスサンドを、ヨドコウ桜スタジアムのこけら落としで販売するという例も生まれました。
(ナカバヤシと和なかが共同開発した「れたこ」)
「パートナーメリットはたくさんあります。知名度アップやイメージアップを目指す以外にも、セレッソの他のパートナーと接点を持ちたいのであれば、クラブ側からしっかりと紹介してもらえる利点もあります。むしろ私はビジネスツールの一つとしてスポンサードするという積極的な選択もあるのではないのかと思っています」と秋田氏は語ります。
ゴールドパートナーの株式会社シクロは医療サービスを軸に多方面に事業を展開する企業です。2018年にクラフトビールの製造を行う『Derailleur Brew Works(ディレイラ ブリュー ワークス)』を立ち上げ、2021年2月にセレッソ大阪とパートナー締結を果たします。
そして、2021年4月からホームスタジアムで「HIGH KICK ASS(ハイキック アス)」と「HAT TRICK BERRYZ ROYALE(ハットトリック ベリーズ ロイヤル)」の2種類のセレッソ大阪公式クラフトビールの販売を開始しました。
(ビールが苦手な人にも飲んで欲しい!という想いで造られた公式クラフトビール)
代表取締役社長の山﨑昌宣氏は以前よりビール×スポーツの愛称の良さを感じており、「ビールとスポーツをコラボレーションすることで、私たちの地域にも何かしら“化学反応”を起こすことはできないだろうか」という考えから、関西を拠点にするプロスポーツチームにアプローチをかけた結果、「最も強く興味を示してくれた」(山﨑氏)セレッソ大阪と取り組むことになりました。
(株式会社シクロ・山﨑昌宣社長)
もともとは公式クラフトビールを造り、スタジアムで販売することを目的としていたと山﨑氏は言います。しかし、結果的には想定以上のリターンがあったと振り返ります。
「WEBでの展開やスタジアムでの販売など、様々なアイデアをポンポンポンと出してくださったんです。パートナー締結発表は2021年2月ですが、お話を始めたのは2020年の夏のこと。以来繰り返し弊社に足を運んでくださり、お互いのメリットについて何度もプレゼンをしてくださいました。新鮮だったのは、とにかく弊社のチャレンジを私たち以上に面白がってくださったこと。私たち以上に楽しんで一緒にやろうという姿勢を見せてくださったんです。これはパートナーになる上で本当に大きな信頼につながりました。」
(公式クラフトビール発売は各種メディアでも話題に)
そして、ECサイトでの公式クラフトビール販売初日を迎えると、アクセスが集中して受付開始からなんと36秒でサーバーがダウン。復旧の対応に追われるなど一苦労でしたが、同時にサポーターの熱量に驚き、この経験から一つの大きな学びがあったと山﨑氏は言います。
「パートナー企業は自分たちの取り組み次第でその熱狂的なファンを自分たちの仲間に招き入れることができるわけで、相思相愛の関係を築くことも可能となります。魅力的なスポーツ、魅力的なクラブと一緒に何かを生み出すことは本当にエキサイティングなことなんだなと」
前述のシクロと同様に、「熱狂的なファンを自分たちの仲間に招き入れること」のメリットの大きさを感じているのが駐車場のシェアリングサービスを運営するIT企業の株式会社akippaです。
自身もサッカー経験者で「大のセレッソサポーター」である代表取締役社長の金谷元気氏はセレッソ大阪と組んだことによる“SNSでの波及効果”について語ります。
(株式会社akippa・金谷元気社長)
「セレッソさんのSNSのフォロワー数はFacebookで約100万人、ツイッターも約17万人を超えています。ですから多くのサポーターの皆さんにSNSを使って、akippaのサービス内容を告知できるのは大きな魅力でした。継続して効果的なアプローチができることは私たちのような事業形態にとって大きなアドバンテージだと感じました。弊社のビジネスはインターネットで予約するサービスですから、仮にスタジアムでチラシを配布してもアクセスしていただくにはかなりハードルが高いのですが、SNSといったインターネットサービスを利用すれば、ダイレクトにURLをクリックできますので、SNSの活用はビジネスを展開する上でもかなり有効だったと思います」
(Jクラブの中でもセレッソ大阪のSNSフォロワー数は突出して多い)
サポーターが日々チェックするクラブのHPやTwitterを初めとしたSNS上に告知できる“面”を取ることで、自社ではアプローチできない新規ユーザーを取り囲むことが容易にできます。加えて、セレッソサポーターの認知と連帯感を獲得したことにより、他クラブのサポーターやスポーツファンにもその名が広まっていく副次的効果を得られたとも、金谷氏は言います。
(スタジアム周辺でakippaアプリから事前予約できる駐車場)
「もともとはスタジアムに観戦にいらっしゃるセレッソサポーターに対してのサービスを想定していたのですが、akippaの利便性や認知度が上がったおかげで、他のJリーグクラブやプロ野球の球団からも提携したいという申し出を数多く受け、現在では約20クラブと提携するまでに至っています。現在のようにビジネスを大きく展開することができたのも、そもそもセレッソさんとの取り組みが原点だったことは、私としても本当にうれしかったです」
異なるカテゴリーでパートナーシップを結ぶ3社の事例を覗くと、得られるメリットの多様性に気付かされます。しかし、もちろんこれで終わりではありません。今後セレッソ大阪がプロスポーツクラブとしてさらに発展し、保有するアセットに変化が起これば、今までにない価値が生まれ、企業の課題を解決する新たな一手が生まれていきます。今後もパートナー企業へ最大限の価値を提供するため、セレッソ大阪は奔走し続けます。
※第4回は、セレッソ大阪を長年愛するサポーターであり、クラブを様々な面で支えていただいているスタジアムDJの西川大介さんと、タレントの池田愛恵里さんへのインタビューを通じ、サポーターからみるパートナー企業への想いについてお届けします。