【事例紹介: 株式会社シクロ】
セレッソの“新たな相棒”として、
地域に根差し歩んでいく

 本連載は、セレッソ大阪のことを一人でも多くの方に知って頂き、クラブと共に夢を目指す“セレッソファミリー”としてお迎えしたいとの想いのもと、これまでの活動事例を交えながら、我々が考えるクラブとスポンサー様との理想のあり方について、全6回のシリーズ形式にてお届けいたします。

 第5回は、セレッソ大阪のスポンサー様に、提携に至った経緯や企業から見たセレッソ大阪の魅力についてお話しいただきます。(※本稿は2部構成となり、後編となる今回は株式会社シクロ様にご登場いただきます)

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 「歓喜の瞬間を共にする新たな相棒」ー2021シーズン、このキャッチフレーズと共にホームスタジアムに登場したセレッソ大阪公式クラフトビールの存在をご存知だろうか。今注目のクラフトビールを手がけているのが、大阪市内に本社を構える株式会社シクロである。

 2008年、介護や総合的な医療サービスを主体に創業し、大阪市内を中心に様々な事業を精力的に展開している伸び盛りの企業で、2018年には新たにカフェ事業やクラフトビールを醸造販売する『Derailleur Brew Works(ディレイラ ブリュー ワークス)』を大阪市西成区に立ち上げた。

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 2021年2月1日には、「地域に根差した事業活動の一環として、サポーターの皆様と共に地域を盛り上げていきたい」とセレッソ大阪とのゴールドパートナー契約締結を発表。グループを率いる代表取締役社長、山﨑昌宣氏にスポンサードに至る経緯、その反響や効果、将来への展望を聞いた。(※インタビューは2021年6月に実施)

医療から飲食まで多角的な事業展開

──今シーズンからセレッソ大阪のゴールドパートナーとなったビールメーカー『Derailleur Brew Works(ディレイラ ブリュー ワークス)』を運営する株式会社シクロですが、本業は医療や介護と聞いて少し驚きました。

山﨑
:そうですよね(笑)。弊社は2008年6月、介護や総合的な医療サービスを主体に創業しました。大阪市内、特に南部エリアを中心に、介護支援サービスについての相談などを行う「シクロケアプランセンター」、ヘルパー派遣を行う「シクロつるみばし」、介護保険のレンタル制度に対応した車椅子や電動ベッド、電動リフトなどのレンタルを行う「テクノエイドシクロ」などの総合的な医療サービスに幅広く取り組み、他にも障害をお持ちの方の就労を支援する「デルニ」や、リサイクル・リユース事業に特化した「リセールショップ」、カフェ兼ビアパブ兼食堂「アビタイユモン」といった飲食関連事業も展開しています。「事業を通じて地域の皆さんと一緒に歩んでいきたい」。この想いこそが13年前、私たちが法人を設立した際の原点になっています。

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(ほんのりディープな人情あふれる街”ニシナリ”に醸造所を構える)

──ビールの醸造・販売をスタートしたのは最近ですね。

山﨑:はい。2018年からです。クラフトビールの醸造・販売事業『Derailleur Brew Works』をスタートさせ、ディープな人情あふれる街である“ニシナリ”を発信拠点に、これまでに「西成ライオットエール」や「新世界ニューロマンサー」といった大阪らしさと遊び心に満ちたクラフトビールを50種類以上、醸造してきました。

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(ビール好きはもちろん、苦手な人でも飲みたくなるセレッソビールを!という思いで、2種のクラフトビールが造られた)

──そして、セレッソとパートナー契約を結び、公式クラフトビールを造られた。

山﨑:2021年4月からホームスタジアムで「HIGH KICK ASS(ハイキック アス)」と「HAT TRICK BERRYZ ROYALE(ハットトリック ベリーズ ロイヤル)」の2種類のセレッソ大阪公式クラフトビールを醸造販売しています。セレッソのオフィシャルホームページ上でもクラフトビール特設ページを開設しています。ラベルもビール自体もチームカラーであるピンクにこだわって造った私たちの自信作ですね。

公式クラフトビールの特設ページはこちら
https://www.cerezo.jp/special/craft_beer/

信頼につながった取り組む姿勢

──セレッソとパートナー契約を結ぶことになった経緯やきっかけを教えてください。

山﨑
:パートナーになろうと思い立ったのは、ビールとスポーツに相性の良さを感じていたことにあります。ビール片手のスポーツ観戦は風景として絵になりますし、すごく素敵だなと思うんです。ヨーロッパのサッカー、アメリカの野球など、世界のスポーツシーンを見ても試合観戦にビールは欠かせないアイテム。私自身、若い頃に自転車でヨーロッパを旅した際、立ち寄ったサイクリスト・カフェで気軽にビールを楽しむ人たちが大勢いる光景に強い感銘を受けました。ですからビールとスポーツをコラボレーションすることで、私たちの地域にも何かしら“化学反応”を起こすことはできないだろうか。そう思ったのが大きなきっかけの一つです。

──サッカー以外も含め大阪にプロスポーツクラブはたくさんありますが、セレッソを選んだ決め手は何だったのでしょうか。

山﨑
:事前に森島寛晃社長にもお話しましたが、関西を拠点にしている野球、サッカー、バスケットといったプロクラブを中心に、競技を問わず全方位的に私たちの想いをぶつけました。「私たちの造ったビールを通じて何かをやってみたい」と。そうしたところ、フットワークも軽く、真っ先に弊社まで出向いてくださり、興味を示してくださったのがセレッソだったんです。

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(醸造所に訪問し、山﨑社長と楽しそうに談笑する様子)

──ビールでコラボできそうと感じたのがセレッソだったと。


山﨑
:はい。「公式クラフトビールを造ってスタジアムで販売したい」。当初はパートナーになれば、そういったことは実現可能だろうと簡単に考えていました。ところがセレッソは、ビールについてはもちろん、WEBでの展開やスタジアムでの販売など、様々なアイデアをポンポンポンと出してくださったんです。パートナー締結発表は2021年2月ですが、お話しし始めたのは2020年の夏のことで、以来繰り返し弊社に足を運んでくださり、お互いのメリットについて何度もプレゼンをしてくださいました。新鮮だったのは、とにかく弊社のチャレンジを私たち以上に面白がってくださったこと。私たち以上に楽しんで一緒にやろうという姿勢を見せてくださったんです。これはパートナーになる上で本当に大きな信頼につながりました。

認知度のアップと反響の大きさ

──セレッソのパートナーとなって驚いたことは何かありますか?

山﨑
:それはたくさんあります(笑)。まず、ECサイトでの公式クラフトビール販売初日、アクセスが集中して受付開始からなんと36秒でサーバーダウン(苦笑)。これは弊社にとって経験したことのない異次元のアクシデントで、すぐにサーバーを増強するなど対応に追われました。また、弊社のSNSのアカウントが乗っとられたこともありましたが、セレッソサポーターの方々がすぐに気づいて通報してくださったり、「あんたらセレッソのパートナーになるんやったらクラブのことをよう知っとかなアカンで」と森島社長のキャラクターやセレッソの8番が持つ意味について教えてくださったり、オリジナルの選手名鑑を作成し送ってくださった方もいらっしゃいました。

──ファン・サポーターの方が、快く迎え入れてくださったんですね。

山﨑:はい。それをすぐに感じられて驚きましたし、Twitterで「セレッソさんと一緒に公式クラフトビールを造ります」とツイートしたところ、その日だけでフォロワー数が3倍になってリツイートをしてくださる方が続出し、「いいね」も多数付いて、「頑張れ!」とDMが舞い込むなど、セレッソの持つSNSのフォロワーの影響力の大きさをつくづく実感しました。

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(新聞記事にも取り上げられた)

──パートナーメリットは、他にどんなことを感じられていますか?

山﨑
:大阪のクラフトビールの中で、『Derailleur Brew Works』は後発の部類だったのですが、セレッソとタッグを組んだことでスポーツ新聞の一面に取り上げられたり、テレビで放送されたりすることで、認知度が一気に上がり、業界内での地位も格段にアップしました。地方のサッカーファンの方々、Jリーグが好きな方々、クラフトビールを応援してくださっている方々、そういった多くの人たちが弊社の商品に興味を持ってくださったおかげで、新たな取引が始まったケースもあり、改めて反響の大きさに驚かされました。私たちはこれまで大阪市の南部エリアを地場として地道に事業展開してきましたが、あらゆるところからこんなにもダイレクトに反応があり、心強い思いをしたことはこれまでなかったことです。おそらくセレッソがファン・サポーターに対して親身になって接しているのと同じようなスタンスで、ファン・サポーターの方々も私たちパートナーに対して接していただいている。様々なおすそ分けをいただいていると感じていますね。

パートナーとして抱く夢

──セレッソのパートナーとなったことで、他にどんな気づきがありましたか?

山﨑
:それは、プロスポーツコンテンツの持つ圧倒的な魅力です。観客席で味わう生のサッカーの迫力。これぞプロスポーツとしての醍醐味ですよね。そこには熱狂的なファンがいます。パートナー企業は自分たちの取り組み次第でその熱狂的なファンを自分たちの仲間に招き入れることができるわけで、相思相愛の関係を築くことも可能となります。魅力的なスポーツ、魅力的なクラブと一緒に何かを生み出すことは本当にエキサイティングなことなんだなと痛感しています。

──いろいろな意味での可能性を感じられたと。

山﨑:はい。ただ、パートナー費用というのはあくまでも“入会金”のようなものだなとも感じました。純粋にサッカーが好きで、もっと強くなってほしいからチーム強化の一環としてパートナーになっている側面もありますが、お金を出してそれで終わりではない。お互いにWin-Winの関係を目指すのであれば、セレッソが親身になって心を砕き、骨を折ってくださるように、私たちパートナー側も本気でセレッソのためになること、セレッソにとって有益になる取り組みを行っていかなければならないと考えるようになりましたね。

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(コラボクラフトビールからセレッソ大阪を応援してくださるきっかけになってほしいと熱く語った)

──今後、セレッソとどんな取り組みをしていきたいと考えていますか?

山﨑:私たちの夢ですが、近い将来、セレッソがタイトルを獲得した際、ビール掛け専用のビールを造らせていただければ、と密かにアイデアを温めています。ビールの泡の量は、造る際に調整できるんですよ。思い切り泡が映えるような、そして目に染みないようなビールを造ってみたいですね。

──ピンクに染まるビール掛け。少し想像しただけでもワクワクします。最後に、今後の展望、意気込みを聞かせてください。

山﨑:弊社の名前であるシクロはフランス語で「CYCLO」と表記します。頭文字がセレッソと同じ「C」ですので、私たちも企業規模をもっと大きくしていて、将来はセレッソの“相棒”と呼ばれるくらいに成長していきたいと思っています。そういった意味でも今回のスポンサードは弊社にとって、とても大きなモチベーションにつながっています。


※本シリーズの最終回となる第6回は、セレッソファミリーの想いの結晶であるヨドコウ桜スタジアムの魅力についてお届けします。